トランスサイレチン型心アミロイドーシス疾患修飾薬の導入施設認定を取得!

循環器科部長  井本 宏治


 心アミロイドーシスは、疲労、呼吸困難、虚弱、意識消失、浮腫、不整脈、手根管症候群、脊柱管狭窄症のように多岐にわたる徴候および/または症状を引き起こす可能性があり、また別の疾患に似た漠然とした症状が多いため、診断に難渋することが多い疾患です。患者数は世界で30万~50万人と言われていますが、診断に至らず適切な治療が受けられていない患者さんが多く存在すると推定されています。進行性かつ致死性の疾患である本疾患において、日本の研究では、未治療の場合の生存期間は診断後およそ3.8年(中央値)と報告されており、早期診断と治療介入が患者さんの予後を大きく左右します。
 心アミロイドーシスの中でも、トランスサイレチン(TTR)と呼ばれる蛋白質が解離してアミロイド線維となり心臓に沈着した疾患が、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)です。肝移植以外の有効な治療法がなく、以前は心不全症状に対し利尿剤等で治療されていました。しかし、疾患そのものに対する治療介入として、トランスサイレチン4量体安定化薬(トランスサイレチンの解離を起こしにくくすることでアミロイド線維の生成を抑制する働き)が近年、臨床使用可能となり、2019年3月にタファミジス(ビンダケル®)がATTR-CMに適応拡大されたことで早期診断を行うことの臨床的価値が高まりました。当院では2024年7月に、『トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対するビンダケル導入施設』の認定を取得し、2025年3月には新たにアコラミジス(ビヨントラ®)が保険承認されたことを受け、『トランスサイレチン型心アミロイドーシス疾患修飾薬導入施設』へ施設認定の名称が変更されました。
 ATTR-CMを疑っての精密検査が推奨される患者さんとして、以下のようなクリニカルシナリオが挙げられます。本疾患の啓発を進め、早期診断、早期治療に繋げるため、該当する患者さん、疑わしい患者さんがいらっしゃいましたら、いつでもご紹介いただけますと幸甚です。

<ATTR-CMを疑うべきクリニカルシナリオ>

  1. 遺伝性ATTR-CMの家族歴がある患者
  2. 60歳以上で、心電図において伝導障害、低電位、R波増高不良が見られる心肥大患者
  3. 原因不明の左室肥大を伴う60歳以上のHFpEF(左室駆出率が保持された心不全)患者
  4. 心房細動および左室肥大を伴う60歳以上のHFrEF(左室駆出率が低下した心不全)患者
  5. 高感度トロポニンの持続的な上昇を伴う60歳以上の心肥大患者
  6. 両側手根管症候群を伴う心肥大患者
  7. 心エコーで右室/心房中隔/弁の肥厚、左室のgranular sparklingまたはapical sparingを伴う心肥大患者
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