電子カルテシステム導入の経緯

統合情報システム

電子カルテシステム導入の経緯

1)導入目的・コンセプト

「医療の質の向上、病院管理運営の効率化、患者サービスの向上」という目的を実現するための方法論として統合情報システムを開発・導入しました。これらの基本コンセプトを実現するためにIT化が最も相応しい方法であるとの考えの下に導入が行われ、最初から電子カルテシステム化を目指していたわけではありません。

システム開発の基本コンセプトは、「一元化、共有化、標準化」です。システム開発の第1段階として、病院内の組織体制を再構築して、四局体制(医療局・看護局・医療技術局・事務局)を確立し、意思決定のための会議体・委員会体制を明示しました。縦割り・横並びの業務を見直し、業務運用に関する四局共通の意思決定を行い、業務運用の一元化を行うとともに、バラバラとなっていた患者情報などの病院情報の一元化を目指しました。一元化を踏まえてシステム構築を行い、情報が共有化できる仕組みとし、統合情報システムへ発展させました。

2)開発体制

開発期間は基本構想から稼動まで約7年以上を要しました(開発構想1993年~1995年、基本構想1995年、実施計画1996年、ソフト開発1996年~1999年、リハーサル1999年)。

開発方法は当院が示す運用概念図を基盤に、共同開発企業(富士通)から原型となる試作品(プロトタイプ)の提供を受け、それをたたき台にして共同開発する形で行いました(プロトタイピング方式)。病院側の開発体制は、情報開発委員会→ワーキンググループ代表協議会→各ワーキンググループ(部門18、特殊12WG)で一元化の合意形成を行い、病院側・開発業者双方から成るフロント協議において最終的な意思決定を行いました。

●電子カルテシステム開発に向けての主たる病院業務として以下を進めた。

  1. 一患者一診療録への移行(1995年10月)
    各科別に作成・管理されていたカルテを一患者一診療録に変え、全職種の時系列記載とすることで、紙上での電子カルテのシミュレーションを行い、医師を初めとした職員の意識改革につなげました。
  2. 業務マニュアルの作成
    旧病院における、あらゆる業務のマニュアルを作る過程で、病院全体の業務の一元化に向けた方向性が定まり、さらに電子カルテ運用を含む新病院でのマニュアルへと変換・作成するステップに至り、システム化への動きと同期しました。
  3. 運用概念図(業務フロー)の作成
    一つ一つの業務を詳細に分析し、人・物・情報・金の流れを図に表しました。各部署や各科、各人でバラバラであった業務を見直す過程で病院全体としての標準の方法を各職員が認識しやすくしました。この業務フローを基本として,電子化された場合の入力方法,展開方法,指示受け方法などを細かくシミュレーションしました。

3)開発経緯

1992年 4月 電子カルテ構想書策定
1995年10月 厚生省、『電子カルテ開発委員会』参画
1995年10月 一患者一診療録へ移行
1996年 4月 統合情報システム仕様書策定
1996年10月 統合情報システム開発委員会発足
1996年12月 共同開発企業(富士通)決定
1998年 3月 開発環境・最終仕様決定
1998年 7月 職員コンピュータ教育開始
1999年 3月~7月 リハーサル施行(計8回)
1999年4月 厚生省3局長通知『診療録等の電子媒体による保存について』
1999年8月 新病院移転、統合情報システム(SHIMANE-IIMS)稼動開始 IIMS 1 構成図
2000年4月 隠岐島遠隔医療支援システム本運用開始(平成10年度経済産業省補正事業)
2000年 8~12月 診療所用電子カルテシステム機能検証
(平成11年度経済産業省補正事業:電子カルテ・ネットワークの実証実験)
2001年度 出雲・隠岐地域における『地域チーム医療と遠隔医療のための電子カルテ統合ネットの構築』
(先進的IT技術を活用した地域医療ネットワーク委託事業:平成12年度経済産業省補正事業)
2002年 9月 医療ネットしまね本稼動開始
2002年度 保健医療福祉情報セキュリティ推進事業
(平成14年度経済産業省事業)
2004年度 統合情報システム(SHIMANE-IIMS)
機器更新・機能更新

4)第二世代統合情報システム(IIMS2)への移行

1999年8月1日に稼動を開始したIIMS1は2004年度には耐用年数5年を経過した事、当初目指した「医療の質の向上、病院管理運営の効率化、患者サービスの向上」満足するシステムとして成長させる事ができ、さらに成長をとげるため機器更新、機能更新を行うことにしました。

第二世代IIMS2の基本コンセプトは、初代のコンセプト「医療の質の向上、病院管理運営の効率化、患者サービスの向上」に加え、5年間の経験を基盤に、「高速化、MMI機能の精緻化、後利用」を更なる目標として定め、「マルチウィンドウ」、「横断的指示、実施、参照機能」を組み込む事により、効率化の促進を促しました。看護端末は無線LANとし、画像系は高速化を達成するとともに、レントゲンフィルムの作成を完全に廃止したフィルムレスへと移行しました。