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ごあいさつ

病院長 中山健吾

島根県立中央病院 病院長 中山 健吾  

Hospital of the people, by the people, for the people

2011年を代表する漢字として「絆」が選ばれました。2011年3月11日に発生した東日本大震災での被災者の「人としての振る舞い」に絆を感じ、全国各地から本当に多くの「ヒト、モノ、カネ」の支援がなされた事を「絆」という言葉で表現したのだと思います。私は大震災の中で献身的に支援活動を行った行政職員、警察、消防、自衛隊、医療関係者や多くの国民の行動(募金やボランティア活動など)に、人の偉大さ、やさしさ、強さを再認識しました。しかしその後の日本社会、政治、マスメディアの対応は相変わらず「混迷」「思考停止」を露呈し、今後の被災地の復興、医療再生に大きな不安を感じています。

歴代のアメリカ合衆国大統領の中でも最も偉大な大統領の一人と評価されているエイブラハム・リンカーンはGovernment of the people, by the people, for the people(人民の、人民による、人民のための政治)の名言を残しました。これを無断で拝借してHospital of the people, by the people, for the peopleが島根県立中央病院の立ち位置なのだと思います。県民の病院(県立病院)で、県民に信頼、支援され、県民のために存在する自治体病院でありたいと思っています。当院のミッションは「高度・先進医療の提供」「救命救急、周産期医療などの政策医療の砦になる」「地域医療への貢献」にあります。そして島根県には県立の総合病院が当院だけであるという特殊性から、「4疾患5事業(がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病の4疾患と、救急、小児、周産期、僻地、災害などの5つの政策医療)」を中心とした「真に必要な医療」を提供する使命を持ちます。

この「4疾患5事業」に責任を持つことは大変な困難と努力を必要とします。近年周辺の医療環境は厳しい状況にあり、当院の「がん、脳卒中、心筋梗塞」の患者数は県下の医療機関で一番多くなっています。また救命救急センター、総合周産期母子医療センターを併設しており、その施設、スタッフ数、患者数は近隣の医療機関で最大規模となっています。 さらに昨年(2011年)6月13日には当院を基地病院としてドクターヘリ事業が開始されました。現在のペースで運航されますと、年間約600回の出動件数となる見込みです。雲南市、大田市、川本町、飯南町、島根半島全域が当院から15分以内の圏域となるメリットを生かし、初期救急医療のレベルアップに寄与しています。また島根県の中山間地、離島、西部地域からの患者搬送では、時間短縮による患者の負担軽減だけではなく、現地の医師が地元の医療機関を離れる必要がない(フライトドクター、ナースが同乗)ため、医師不足対策としても大いに貢献しています。

ここ数年間、急性期病院として役割を果たすため集中的に病院機能の再編に取り組んできました。回復期リハビリテーション病棟(約40床)を閉鎖し、一般病床に移行しました。また人間ドックや検診業務を大幅に縮小しながら、その診療機能を周辺の医療機関にお願いするなど医療機能分担を進めてきました。そして当院が「4疾患5事業」に集中的に対応できる態勢を整えてきました。がん診療については地域がん診療連携拠点病院としてがんの最新の診断、治療に取り組むとともに、内視鏡治療や胸・腹腔鏡手術など患者さんに負担の少ない治療を推進しています。また血液幹細胞移植などの専門的な医療の提供に努めています。施設整備では外来がん化学療法室の拡大整備、病棟無菌室の増床と集約化、抗がん剤のミキシング専用室設置などにより8階病棟を腫瘍センター化しました。また今後のがん治療で重要になる放射線治療の充実のため、IMRTなどの高い精度で治療効果の優れた放射線治療が可能な最新の医療機器を導入しました。そして島根県全県を対象にして、病院や診療所間のがん診療の連携を目指した「がん地域連携パス」を作成し、積極的に運用しています。

感染症については「4疾患5事業」には入ってはいませんが、当院は感染症指定病院として重要な役割を担っています。電子カルテシステムを活用して、患者、病室、病棟単位での感染症、耐性菌、必要な感染症対策などを一覧で表示する「感染症マップ」を導入し、院内感染のモニタリングを強化しました。国立感染症研究所の協力を得てICTを活用した感染症サーベイランスシステム(バイオテロや爆発的な感染症発生のモニタリング)も運用されています。またさまざまな感染症に対応できる入院用感染症病室を救命救急病棟にも整備いたしました。さらに本館1階の外来フロアーの西側に外来感染症診察室(棟)を増築し、2月20日から運用を開始しています。強毒性の新型インフルエンザにも対応できる本格的な診察室(待合室や更衣室も整備)が3室あります。必要時には本棟の外来ホールの患者と動線が交わらないように、西側に専門の受付、入り口を設置しました。

当院は急性期に特化した病院として「4疾患5事業」を中心に医学的水準、診療レベルの向上に真摯に取り組んできました。今後ともわれわれは自治体病院としてHospital of the people, by the people, for the peopleの心構えを持って、地域の医療機関や県民から信頼され必要とされる病院を目指して一層の努力を続けてまいります。今後も変わらぬご指導、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

 

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